アルゼンチンの通貨暴落!! 予想外のところから金融危機が発生するか?

株式投資

2019年8月12日にアルゼンチンの資産がトリプル安を示し、大きなニュースとなりました。遠い南米の国の経済不安と考えている方が多いと思います。しかし、発達した金融システムと米中の覇権争いを依り代に日本を含めた世界経済の危機に発展する可能性があります。本記事では、アルゼンチンの状況と、世界への信用リスク伝播の可能性について解説します。

アルゼンチンの通貨と株価が暴落!!

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8月13日、アルゼンチン大統領の予備選挙で、現職のマクリ大統領が予想外の大差をつけられ2位となりました。これを受けて、同日のアルゼンチン・ペソは一時15%安と過去最安値を更新、オフショアの国債も売られ、100年債はニューヨーク市場で一時27%の下落となりました。さらに、アルゼンチンの株式指数であるメルバル市場に至っては40%もの下落を記録しました。

経済格付けの低いアルゼンチンは投機家の的になっている

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ご存知の方もいると思いますが、アルゼンチンは経済状態が悪く、過去に国債のデフォルトを8回も起こしています。そういった実績があるため、プロの投資家から見れば「またアルゼンチンか」と思う程度なのです。しかし、過去の金融危機のきっかけが、アルゼンチンをはじめとする新興国の政治不安や、経済危機を発端としているため、大きな話題となりました。 

特に問題なのは、アルゼンチンのデフォルトは慣れているはずなのに、担当者がパニック売りを起こしたことです。いつも通りなら、ここまで極端なアルゼンチン資産の下落は起こりません。様々な伏線が考えられますが、今回の大幅な下落は国債市場がかつてない規模のバブルを形成しているという不安が根底にあるようです。 

そもそも、2005年にデフォルトを起こしているアルゼンチンが100年債を発行できていることに、現在の債券市場の異常さが伺えます。国債は、満期まで保有していればクーポン分の金利をもらえるという金融商品です。満期保有が前提の商品で、10年程前にデフォルトした国が、100年債を発行できていること自体、間違っています。なぜこのようなことが起こるかというと、短期で国債価格の変動を狙ったトレードで利益を上げたいという需要があるためです。世界中がマイナス金利になる中、運用利回りを求めて、一部の機関投資家がリスクを承知で売買を繰り返しているのです。

CDSを通じた信用不安が発生する?

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元々、国債は短期売買ために作られていません。そのため、信用リスクのみを移転することで短期売買を行っています。それがCDS(Credit Default Swap)です。CDSは、2008年のリーマンショックで有名になり、その後は発行を控えるはずでした。しかし逆に、世界中のあらゆる金融商品に対し発行され、短期トレーダーの利ザヤ取りに利用されています。本来、CDSは債券の信用リスクにたいする保険として作られました。しかし、信用リスクのみを移転できるので、短期トレーダーにとっては都合の良い商品になったのです。 

このCDSでは、アルゼンチン国債のデフォルト確率が70%近くになっています。そして、世界で一番CDSを抱えているのがドイツ銀行と言われています。ドイツ銀行はEUの要であるドイツの民間銀行です。ここでCDSの損失による問題が発生すると、連鎖的にあらゆるCDSの価格が下落し、金融機関同士の売買がマヒします。リーマンショック時以上の大量のCDSが売買不能になると、マネーの流れが止まってしまいます。 

過去の金融危機もCDSはありませんでしたが、新興国の金融危機が発端となり、先進国の金融機能をマヒさせるまで進みました。それが、リーマンショック以上の規模で起こる可能性があるのです。

米国と貿易戦争中の中国も大きなダメージ

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アルゼンチンから、世界最大のCDS保有銀行であるドイツ銀行への、信用不安連鎖を紹介しました。そして、もうひとつ、政治的なつながりを含めた信用不安の連鎖の可能性があります。それが、中国です。 

中国は、米中貿易戦争により貿易、通貨の両面からダメージを受け、経済が失速しています。これに加えて中国は、米国との覇権争いのために、南米とのつながりと強めていました。南米版一帯一路で、アルゼンチンとの通貨スワップを拡大するなど、影響力を高めていたのです。 

今回のアルゼンチン国債の暴落は、中国の懐を直撃したと考えられます。中国の影響力の持ち方は、金融的手法よりも政治と実体経済のかかわりに重点が置かれています。アルゼンチンの経済不安は、これまで援助してきた債券が不良化することになるため、CDSのように信用リスクを簡単に転売することができないのです。

ただでさえ、米国との争いで自国経済が弱っているところに、リスクを度外視した関係強化が裏目に出ていると言えます。そして、これはアルゼンチンだけでなく、他の新興国も同じです。アルゼンチン発端の不安から、他の信用が低い新興国も資産が売られ不安定化しています。これらの新興国に対しても影響力を強めていた中国にとって、世界覇権争奪に向けた大きな障害になるでしょう。 

この、国のつながりによる負の連鎖が止められない場合、中国発の未曽有鵜の規模の金融危機が、起こる可能性もあります。

まとめ

日本ではあまり大きく取り上げられていませんが、アルゼンチンの経済不安はCDSや中国の拡大した影響力を伝わって、全世界に広がる可能性があります。かつて、1998年のアジア通貨危機により、世界中の金融機能がマヒしました。このときは、タイから始まり韓国のデフォルトまで2年かかりました。今はCDSにより、当時と比べ圧倒的な速度で危機が伝播します。さらに米中貿易戦争、EUの景気後退、ブレグジット問題など、信用不安の伝播とパニックを起こしうる種が多く存在しています。投資家であれば、常に目を配っておき、自分の資産を守れるようにしておきましょう。